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レンズ収差補正
レンズ収差補正は、現像時にレンズの収差を補正することで、より高品位な画像を生成するための機能です。

写真レンズは収差が存在し、デジタルカメラの解像度が向上した今日では、その収差が絵に大きな悪影響を及ぼす場合もあります。 レンズ収差には、球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差、軸上色収差、倍率色収差や、 周辺に行くほど光量が低下する周辺光量低下があります。 SILKYPIX® Developer Studio 2.0では、これらの収差に対し、

の3つの補正があります。
レンズ収差補正
図1.レンズ収差補正
シェーディング(周辺光量)補正
シェーディング補正は、画像の周辺で絵が暗くなる周辺光量低下というレンズの特性を補正する機能です。 SILKYPIX® Developer Studio 2.0では、2つのパラメータを使用してシェーディング補正を行います。

[ダイアログ(図1)の操作方法]
(1)画角(度)
撮影時のレンズの対角線画角を入力します。

レンズは、周辺にいくほど光量が低下する性質を持っています。 これは、画角の大きい広角レンズほど大きく、画角の小さい望遠レンズほど小さくなります。 35mmフィルム換算(フルサイズデジタル一眼)で、50mm の標準レンズの画角は約46度、135mm 望遠レンズでは約18度、35mm 広角レンズでは約63度となります。 画角を入力することで、レンズ設計理論上の周辺光量低下を計算して補正が行われます。

ただし、かならずしも実際の撮影時の周辺光量低下とは一致しない場合があります[周辺光量低下の詳細について] ので、先の数値を参考にスライダーを動かして中心と周辺の明るさがバランスする点を見つけてください。

画角イメージ
図2.画角イメージ
(2)適用率
補正量を適用する割合を入力します。

0%にするとまったく補正しなくなり、100%にすると画角から算出された理論値が使用されます。パラメータは120%まで指定可能です。
周辺光量の低下も、一種のレンズの味ですから、完全に補正せず周辺光量の低下を若干残しておきたい場合や、周辺に明るいものが写っていて、補正してしまうと飛んでしまう場合などに、補正の適用量を加減する事が出来て便利です。


周辺光量低下の詳細について
像が歪んで結像される場合には、被写体が小さく歪められるほど明るくなります。
例えば、魚眼レンズは、周辺にいくほど被写体を小さく歪めることで周辺の光量の低下を防いでいます。
また、レンズによっては、斜めから見るとレンズの口径が見かけ上減少する場合があり(ビグネッティング)、実際の画角の理論特性よりも周辺でより多くの光量低下を引き起こす場合があります。
絞り値によっても周辺光量の落ち込みが変化します。開放では大きく落ち込み、絞ると落ち込みが少なくなるという現象です。 さらに、デジタルカメラではイメージセンサーへの斜入射によっても周辺光量低下が発生します。
このため、画角はあくまでも参考値です。 バランス良く補正される点を探してください。 この場合、画角パラメータを小さくすると補正量も小さくなり中心と周辺の補正がリニアになり、大きくすると補正量が大きくなり周辺に行くほどさらに補正量が大きくなると覚えておくと便利です。
補正結果を見て、周辺以外はだいたい良く補正されているのに、画像の隅の方だけ暗くなるような場合には、画角パラメータを大きくして、周辺での補正がより強くなるように調整します。 この逆の場合には、小さくします。


ディストーション補正
ディストーション補正は、まっすぐな線が歪んで曲がる歪曲収差というレンズの特性を補正する機能です。 まず、この補正を使う場合には、「有効」と書かれたチェックボックスをチェックしてください。

[ダイアログ(図1)の操作方法]
(3)歪曲率
この状態で、図3-3 にあるように樽型に歪んでいる絵の場合には、スライダーを左に動かして負の値としてください。 スライダーを歪みが取れて、曲がって撮影されている本来はまっすぐな線が、直線になるところにパラメータを追い込みます。 図3-1 にあるように糸巻き型に歪んでいる場合には、スライダーを右に動かしてちょうど良いところに追い込みます。 スライダーのちょうど中心の0の場合には補正は行われません。 補正後、「有効」のチェックを入れたり外したりすることで、補正前と補正後を見比べることができます。


糸巻き型
図3-1.糸巻き型
補正後
図3-2.補正後
樽型
図3-3.樽型


(4)中央・周辺重視
歪みの補正を中央部を重視して行うか、周辺部を重視して行うかを決定します。

画像の端にあるまっすぐな線は適切に補正されているのに、画像中心付近は補正が 強すぎる場合には、周辺を重視する側にスライダーを調整します。 逆に、画像中心付近の補正が弱すぎる場合には、中央を重視する側にスライダーを調整します。 次の例は、レンズの歪曲収差の影響を受けて、柱が曲がっている例です(図4-1)。この画像に補正を 行い、歪んだ柱をまっすぐにした例が図4-2になります。

補正前 補正後
補正前
図4-1.補正前
補正後
図4-2.補正後
(歪曲率:-15 中央/周辺重視:-27)

このパラメータ調整と、歪曲率の調整を交互に繰り返すことで、 ほとんどの写真レンズの歪みを目立たないところまで追い込むことができます。 このパラメータを適切に追い込めば、いわゆる陣笠タイプと言われる複雑な 歪曲収差特性を持つレンズであっても歪曲収差の補正もしくは緩和が可能です。


ディストーション補正によって、はみ出た領域は自動的にトリミングされ、 元の画像サイズと同じサイズになるような拡大が行われます。 トリミング機能の「拡張」機能を使用することで、ディストーション補正に よってはみ出た画素や、RAW に記録されていて、通常では切り取られてしまう画素も 含めて全ての画素を取り出すことができます。>トリミングの拡張へ

ディストーション補正機能は、レンズの歪曲収差を補正する目的で開発されましたが、 遠近感を誇張したり、逆に歪曲を強めることによって、広角レンズ周辺の放射状に 像が流れる現象を緩和するなど様々な使い方が可能です。 行われる補正は、フォトレタッチソフトなどにある単なる変形機能とは異なり、 実際の写真レンズの設計を参考に、レンズで発生する収差特性をシミュレートしています。

次の例は、逆に歪曲をより強めるように変形した例です。補正前の画像(図5-1)は、歪曲収差に よりシャボン玉や人の顔が歪んでいますが、より歪曲を強く歪める方向に補正をかける事で、 その歪みを見た目として自然な形へ変形させました(図5-2)

補正前 補正後
補正前
図5-1.補正前
補正後
図5-2.補正後
(歪曲率:50 中央/周辺重視:-50)

歪曲を自由にコントロールできるレンズを手に入れた気分になって、 いろいろなパラメータの組み合わせをお楽しみください。 きっと、新しい表現が見つかることと思います。



倍率色収差補正
倍率色収差補正は、画像周辺のエッジ部分に色づきが現れる倍率色収差というレンズの特性を補正する機能です。

倍率色収差は、レンズに入射した赤い光が結像する倍率と、緑の光が結像する倍率、青い光が結像する倍率がそれぞれ異なるために発生する現象です。
SILKYPIX® Developer Studio 2.0では、Rの結像倍率と、Bの結像倍率を微小に変化させることで、倍率色収差補正を行います。 まず、周辺部分のエッジの色づきが気になる部分を400%以上に拡大表示します [400%以上に拡大する理由と、補正に適するエッジの選び方について]。 その後、[NR]タブの偽色抑制を小さくします。(例えば、 0 〜 80 程度) 次に、「有効」と書かれたチェックボックスをチェックし、R適用率と、B適用率の調整に入ります。

補正作業を行う際は、図6-2、図6-3のように周辺部を拡大表示して結果を確認しながら パラメータを調整してください。

[ダイアログの(図1)操作方法]

(5)R適用率
赤い光の結像倍率を調整します。エッジに赤または、その補色のシアンが強い場合には、まずこのパラメータを調整します。
(6)B適用率
青い光の結像倍率を調整します。エッジに青または、その補色のイエローが強い場合には、まずこのパラメータを調整します。

2つのパラメータが両方とも最適になったときに、色づきが最も少なくなります。
まず、エッジの状態を見て、「赤<-->シアン」がエッジの両側の色づきで少なくなるようにR適用率を調整し、次に残留した「青<-->イエロー」の色づきをB適用率で調整します。 何度かR,B適用率を繰り返し調整することで、最適なポイントが見つかります。

調整のポイントは、色づきを少なくするという観点ではなく、エッジの色づきを均一にさせるという観点で調整を行ってください。 その後、[NR]タブの偽色抑制スライダーを上げていくと、残留した色づきが消えていきます。気にならない程度まで上げたら、補正は完了です。

この際、偽色抑制を最大まで上げても消えない色づきが残る場合には、倍率色収差が大きすぎて補正範囲を超えているか、あるいは、倍率色収差以外の収差によって発生している色づきの可能性があります。 背景が飛んでいるような明るさの場合には、コマ収差による色づきの可能性があります。

SILKYPIX® Developer Studio 2.0では、倍率色収差以外のレンズ収差よる色づきは、今のところ補正できません。 [400%以上に拡大する理由と、補正に適するエッジの選び方について] も一緒にお読みになってください。

元画像
図6-1.元画像
補正前
図6-2.補正前
arrow 補正後
図6-3.補正後


400%以上に拡大する理由と、補正に適するエッジの選び方について
プレビューを400%以上の倍率にすると、簡易的な現像が行われなくなり、プレビュー更新のちらつきがなくなって、見やすくなります。 倍率色収差補正では、エッジの色づきを観察しながらパラメータを追い込むため、プレビュー倍率を400%以上にしてください。 パラメータ変更に対するプレビューへの反映が遅く使いづらい場合には、さらにプレビュー倍率を上げるか、ウインドウを小さくしてプレビュー更新される部分のサイズを小さくすると快適に操作できます。

また、補正の際に拡大表示する絵のエッジ部分は、もちろん気になるところを選択するのが望ましいのですが、その中でも以下に挙げるような点に留意して選択してください。

  1. 背景が真っ白に飛んでしまっているような明るい背景の中にあるエッジを避ける。
    例の図4-1 では背景が飛んでいませんが、このような絵で明るい空を背景にして枝に収差が出ている場合は収差補正のための着目点として適しません。 背景が飛んでしまっているような部分からは、多くの光が差し込んでおり、倍率色収差だけでなくコマ収差や非点収差の影響を強く受けた色づきが混在してしまいパラメータを追い込みずらくなるためです。

  2. エッジは、画面中心に対してできるだけ直交するエッジを選択する。
    倍率色収差は、色ごとの結像倍率が異なるために発生する色づきです。したがって、画面中心からの放射状の線やエッジでは発生しにくく、直交するエッジで発生し易くなります。 補正ための着目点としては、できるだけ直交する部分を選択することでパラメータの追い込みが楽になります。

  3. エッジは、できだけ画像の周辺部分を選択する。
    倍率色収差の影響が大きいのは、画像の周辺部分です。正確に言うと画像の中心点から遠ければ遠い程、大きな色づきが現れます。 調整に際しては、できるだけ画像周辺を着目点としてください。

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